ボランティア国際年のラストスパート

いろいろあって、みんないい
多様化するボランティアの価値観を支えるしくみづくりの道筋

『2001年はボランティア国際年です!』

こんなメッセージを耳にしている人は多いかもしれない。国連は21世紀の最初の年をボランティア国際年と宣言することでボランティア活動を盛んにし、世界中のボランティアたちが、より積極的に活動できるようなキャンペーンを行っている。日本でも今年に入って、雑誌『ブルータス』や『ホットドックプレス』などでボランティア特集が組まれたり、ベネトンがボランティアを起用したCMを制作したりする動きも見られている。それもこれも、今年が「ボランティア国際年」だから、である。

それにしても『ボランティア国際年』というキャンペーン、誰がどんな風にしかけているのか。

キャンペーンの目的

『ボランティア国際年』というアイディア、そもそも1997年に日本政府が国連の場で提案したことで決まった。国連ボランティア計画(UNV)の提案とリーダーシップにより、主要な非営利組織が集まり、「2001年ボランティア国際年推進協議会」が作られた。そもそも、阪神・淡路大震災後、ボランティア元年といわれ、100万人からのボランティアが復興を支えたことは記憶に新しい。「何か社会の役に立ちたい」と思う人は、いまや4人に3人。しかし、その想いを行動にしている人は少ない。何かをやってみたい気持ちを活かせる場作りは思ったほどは進んでいなかった。その危機感もあり、全国的な組織が集まることで、「機会として活かせるキャンペーン」に!との想いが強かった。何かをやりたい人の芽を育てるために。

15団体からはじまったキャンペーン

全国社会福祉協議会、中央共同募金会、日本青年奉仕協会、大阪ボランティア協会など15の非営利団体が、それぞれ費用持ち出しで集まった。いずれも安定性と影響力のある団体である。そんな団体からの会費、企業からの協賛金、財団からの助成金などをやりくりして、キャンペーンは進む。会議をするにも、会議スペースは各団体の会議室をもちまわりで使用した。きわめて草の根的な活動だった。このボランティア国際年というキャンペーンの目的をこう定めた:

  1. ボランティアについてわかってもらう
  2. ボランティアについてのネットワークを作る
  3. ボランティアへ参加しやすいように、社会のしくみを整える
  4. ボランティア活動をもっとさかんにする

とはいえ、目指すべき方向性が共有されているだけに、そんなことではへこたれない。2000年4月からようやく事務所を間借りすることができるようになる。やがて2001年を迎える頃までには、紆余曲折を経て、助成金や会費、コア団体からの協力などのおかげで、職員を2.5人(フルタイム2人、パートタイム1人)雇う事務局ができあがる。ボランティア国際年についての広報、ロゴマークの提供、ボランティア国際年IYV記念事業の開催、21世紀のボランティア活動推進に向けた調査研究、ボランティア活動に関する提言などを展開する。いまや森進一さん、東ちづるさん、カズンなどの著名人もキャンペーンにかかわり、後押しをしてくれている。NHKボランティアネットでは特設のコーナーを作り、キャンペーンのスクリーンセーバーやジグソーパズルを無償で制作、ネット上で配布し、広報に一翼を担っている。ボランティア国際年をきっかけとして各地で取り組まれるボランティアの行動計画「アクション・プラン」は、いまや279も登録されている。ボランティア国際年関連のイベントは、11月29、12月21のイベントが全国でNPOが中心になって予定されている。この 1年で貸与したボランティア国際年のロゴは800件以上にものぼる。

いよいよ追い込み

ボランティア国際年もラストスパートである。12月1日にはキャンペーンの集大成のイベント「2001年ボランティアの旅」を迎える。国連ボランティア計画事務局長からのビデオメッセージで始まるこのイベントに700人を越す人が集まり、ボランティアについて多様な意見交換をする場になる予定である。また、現在進行中の「ボランティアの木」という動きも、最終段階を迎える。ボランティアに関心はあるが、最初の一歩を踏み出せない人へのメッセージをカードに書き、全国各地に設置されている「ボランティアの木」に掲示するものである。現在、郵便局をはじめ、全国で150万枚のカードが配布されており、各地で「ボランティアの木」の花が咲き始めている。想いの同じ人がお互いに分かる機会になれば、と期待する。

「生き方や働き方が多様化している中、ライフワークのオプションの1つとしてボランティアがあってもいいのではないか」、と広報委員会の益田美知子さん(日本生活協同組合連合会・組織推進本部福祉事務局)は語る。ボランティアする、というライフスタイルを提案し、たくさんの団体がまとまってメッセージを発信することによるPR上のスケールメリットを狙う。「ボランティア」についていろんな考え方があっていい。どれが正しくて、どれが間違っている、というたぐいのものではない。それぞれの価値観にあうもの、それがきっと正解。「いろんなベクトルがあっていい」。

この事務局も年度内には解散になる。15団体からはじまったこのキャンペーンは、いまや130の会員組織によって支えられている。このキャンペーンをいわば「きっかけ」として、この機会をとらえることができるのか。全国各地でボランティアの芽を育てる活動をしているNPOの正念場はこれからだ。そして、ボランティアに対する考え方がもっともっと広がればいい。ガンバNPOはそんな活動と、ボランティアに取り組む方々を応援したい。

ボランティア国際年 ロゴマーク

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ボランティアの木を作る。「国際協力フェスティバル」にて

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朝日新聞主催のシンポジウムでPR

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ボランティア国際年のサポーター「カズン」

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「ワン・ワールド・フェスティバル」で作ったボランティアの木


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