有名人トーク 進藤 晶子さん
NPOやボランティアについて、どんなイメージをお持ちですか?
そうですね。少し距離が有るイメージがあるでしょうか。
カソリック系の小中高に通っていたので、道徳の授業でボランティア活動をする機会がありました。小さくなって着られなくなった服をまとめて海外に送ったり、釜ヶ崎という地域に毛布を配りにいったり、炊き出しに協力したり。生活の中で、無理なくできることを微力ながら学校でやっていました。
釜ヶ崎へのボランティアについては「危険なのではないか」ということで、生徒の親ごさんにしたら心配ですよね。でも、子供達としては行きたいんですよ。私は両親の反対に抵抗しきれませんでした。行けなくて少し残念に思ったことを憶えています。

学校でやっていることだったので気負うことなく関われたような気がします。特別大きなことをしたわけではありませんが、それでも「ありがとう」という手紙がかえってきてクラスメート達と大喜びしたり。
学校で催される年に1回のバザーでは、クッキーやパンを作ったり、模擬店を出したり。その収益金を、現地に送る行程でごっそり盗られてしまったこともありました。もちろん、その国の治安や環境によっても左右されることではありますが、間に入る人が信頼できないこともあるということを小さいながら学んだ気がします。
カソリック系の学校だったので、キリスト教の精神を学んだわけですが、正直言うと、当時の私は聖書を読んでも少し理想的過ぎて、現実生活にそぐわない感じがしていました。
人のために自分を犠牲にする、ことには少し抵抗がありましたし、それではなかなか継続しないのではないかと思っていました。だから、自分のできる範囲で、例えば自分の使っていたものを困っている人にゆずる、なんていうことはアプローチしやすいですよね。ちょっとでも自然なカタチで関われたことは良い経験だったと思います。
残念ながら、卒業してから“ボランティア”は、遠い存在になってしまいました。身近に接する機会がなくなって距離ができてしまったのかもしれません。
職業柄、以前私が参加していたものよりははるかに大きなスケールの様々な活動を耳にすることはあります。ただ、あまりにも大きすぎて…。どこか遠い話のように感じてしまうのでしょうね。
筑紫哲也さんと福岡政行さんが開かれている「カンボジアに学校をつくろう」という活動に参加させていただいたことがあります。日本各地をまわっているとのことでしたが、私は仙台でのイベントにお邪魔しました。前半は講演や質疑応答、そして、後半には学校建設の資金を集めるためのオークション、という構成でした。驚いたのは、当日お見えになった人の数。皆さんとても積極的に参加されるんですよね。日本もまだまだ捨てたものじゃない、なんて嬉しくなりました(笑)。
現在、NPOと何か接点は?
今のところ、特定の団体の活動には関わっていません。どんな団体があるのか、どんな活動をしているのか、そして信頼に値する内容なのか、情報を入手する術もきっかけもなくて…。各々の団体の活動内容が、誰にでも理解し易いカタチで提供されると有り難いですよね。中には怪しいものもあるかもしれないし(笑)。私には、大きなカベの向こう側、という感じがしてとっつきにくい印象があります。
とにかく、自分が何か行動をおこすことで「役に立つ」んだという実感こそが、原動力になるのではないかと思います。それは、ホームレスの方に毛布をかけてあげることしかり。実感できないものにボランティアで協力することは抵抗があります。あとは、いかに自然に参加できる環境をさがし出すか、ということではないでしょうか。
ボランティアは結局自分のためにやっているというドラッカーの言葉もあります。

それも、「手を貸せる」「役に立てる」という充実感なんでしょうね。放送局で仕事をしていましたが、中にはNPOで何かしたいと考えている人、また実際に関わっていた人もいました。
いろんなことに通じることだと思うんですが、自分の存在や行動が、他人の役に立っている、という実感は、何にもかえがたい喜びだと思いますし、それが生き甲斐に通じる場合もあると思います。番組を作るうえでも、「世の中を変えたい」という想いを胸に臨んでいる方も、実際少なくありません。でも結局一人だけでは大きな変化は得られないわけで。だからこそ一足飛びにはなかなか実現しにくいことも、身近なことから積みかさねることで少しづつでも前進していくのだ、ということに気づかされるのかもしれませんね。
ガンバNPOで寄付募集しているプロジェクトだと、AMDAの子ども病院への支援なんかいいですね。私も未来のために何か見つけようと思います。
※進藤晶子さんご推薦のプロジェクトネパール、ミャンマーの子ども病院へご支援を
TBSアナウンサー
71年9月10日生まれ、大阪府出身。 座右の銘は「笑う門には福きたる」
聞き手: 金野 索一(アースセクター株式会社)